五重塔

技量はありながらも小才の利かぬ性格ゆえに、「のっそり」とあだ名で呼ばれる大工十兵衛。
その十兵衛が、義理も人情も捨てて、谷中感応寺の五重塔建立に一身を捧げる。
エゴイズムや作為を超えた魔性のものに憑かれ、翻弄される職人の姿を、求心的な文体で浮き彫りにする文豪露伴(1867-1947)の傑作。
蒼茫と暮れゆく海上、その薄暗い水面にふっと現れてはまた消える細長いもの。
不審に思った釣客が舟をよせると――。
斎藤茂吉に「このくらい洗練された日本語はない」と絶賛された「幻談」の語りは、まさに円熟しきった名人の芸というに値する。
ほかに「骨董」「魔法修行者」など、晩年の傑作五篇を収録。
道心やみがたく出家の身となった慈仁の人慶滋保胤。
その彼のもとへ、愛する女の死に世の無常を悟った大江定基は身を寄せる。
そして縁あってこの二人に連なる聖界・俗界の人びと……。
人生の明と暗、陰と陽とが結びあい、露伴(1867-1947)ならではの広大な文学空間がひらけてゆく。
併収「プラクリチ」。
正岡子規は三十五年という短い生涯の間に多彩な文学活動をおこなったが、その文学は俳句にはじまり、最後まで片時も俳句から離れることはなかった。
『ホトトギス』を主宰、蕪村を再発見した近代俳句の先駆者子規の秀句二三○六句を選び、その俳句世界をあますところなくつたえる。
改版にあたり初句索引を付す。
『墨汁一滴』に続き、新聞『日本』に連載(明35.5.5-9.17)し、死の二日前まで書き続けた随筆集。
不治の病についた「病牀六尺」の世界で、果物や草花の写生を楽しむ一方、シッポク談義、子供の教育論と話題は多岐にわたるが、旺盛な好奇心が尽きることのない子規の姿には全く目をみはらされる。
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